相続不動産の売却

不動産は親から子、子から孫へと受け継がれるのが一般的ですが、時には第三者から譲られるケースもあります。

前の持ち主の名義のままの建物に住み続けることもできますが、名義人と所有者が異なる場合、自由に売買ができないというリスクがあります。また、前の持ち主の建物に住み続ける場合、その不動産の資産価値が低下する可能性や、毎年の固定資産税がかかる点も見過ごせない問題となります。

そこで多くの人は相続不動産の売却を考えるのですが、名義が異なったままで売却することは法律上不可能とされているため、名義変更の手続きを踏むことになります。

ここでは、相続不動産の処分や売却の前に抑えておきたいポイントを詳しくまとめました。

相続不動産の管理者責任について

相続不動産については、相続人に借金などの負債がある場合や、はじめから不要な財産であり相続の必要がない場合など、何らかの事情で相続ができないケースも少なくありません。

その際、相続人は「相続放棄」と呼ばれる手続きを済ませることで、財産を相続せずに他の人に回したり、不動産の相続人を不在にしたりといった選択ができます。一度相続放棄を行えば、その人は「相続人にならない」とみなされるため、不動産に関して一切の権利や義務も放棄することとなり、責任も発生しないことになります。

しかし、相続放棄をしただけで不動産がきっぱりとその人から切り離されるわけではなく、不動産が存在し続けるかぎりその不動産の「管理者責任」は残ったままとなっています。

所有者ない不動産と管理者責任について

相続人の資格をもつすべての人が相続放棄をすれば、その不動産は「相続人不存在」となります。その際、相続財産は法人化して相続財産管理人の選任を行うことになります。(民法第951条・第952条)

ここで選ばれた相続財産管理人は相続財産の清算などを請け負って、残った相続財産は国庫に引き継ぐかたちとなり、不動産は国の管理下におかれることになります。

相続財産管理人は、本来不動産を相続するはずであった相続放棄者が費用を支払うなどして選出するもので、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に選任申立書を作成して提出し、手続きを行います。

選任申立については、被相続人のほかにも被相続人の父母・子どもや孫・直系の尊属・兄弟姉妹・代襲者としての甥や姪の出生から死亡までのすべての戸籍謄本や除籍謄本、改製原戸籍謄本が必要となり、それ以外にも被相続人の住民票除票もしくは戸籍附票、財産を証明する資料が必要となるため、相続放棄をしたあとはすみやかに書類を集めて申立を行います。

上記の他にも不動産登記事項証明書や戸籍謄本、管理人としての候補者がいる場合はその人の住民票か戸籍附票などが必要となり、家庭裁判所から資料を提示するよう追加で指示が出ることがあります。

不動産は、最終的に国の管理下に入るまで、適切な管理者の元で管理をされなければなりません。当事者が相続放棄をしたからといって、途端に不動産と無関係になるわけではないことは最低限押さえておきたいポイントです。

相続不動産の管理者責任については、民法第940条第1項に以下のように規定がされています。

Aさんが相続の放棄をしても、ただちに無関係になるわけではなく、次の相続人であるBさんが管理するまでの間は管理を継続しなければならないということです。Aさん、Bさん、Cさんと3人に相続放棄された不動産であれば、相続財産管理人の選定が済むまでは3人が管理責任を負うことになります。

戸建てやマンションなどの物件、建物については相続財産管理人の選定まで相続放棄者が管理責任を負うため、壁や床の老朽化、建物の破損などについても管理しなければなりません。そのままに放置しておくと水漏れなどのトラブルを起こし、最悪の場合損害賠償を請求されるケースも。

ここが相続放棄の落とし穴と呼ばれる部分であり、放棄をする際に注意しなければならない点です。あくまでも次の相続人もしくは相続財産管理人が選ばれるまでは、管理者責任が発生するということを意識しておかなければなりません。

親名義の不動産の相続について

次に注意しておきたいポイントが、「親名義の不動産」についてです。

相続者の父母の名義になったままの不動産については、名義人が死亡した状態で売却を進めることはできず、必ず不動産の名義が所有者と一致している必要があります。不動産を処分する際には事前に名義を変更し、存命中の人物いずれかの名義に変更しなければなりません

また、親名義の不動産については、親がまだ生きている状態かすでに亡くなった後かによって手続きが異なります。

親が生きている場合

まだ名義人である親が存命であり、元気なうちに贈与を行って名義変更をするといったケースもあります。こちらは「生前贈与」と呼ばれる方法で、親と子の双方の合意により贈与契約書を作成し、名義変更の手続きを行います。

贈与に際して、法務局の不動産登記簿の名義を変更するために以下の書類が必要となります。

親が亡くなっている場合

すでに亡くなった親の不動産を相続する場合、相続人が「遺産分割協議」を行って名義変更の手続きを済ませなければなりません。一例として、不動産の名義人が父で、残された母と子の二人で分けるといったケースなどが挙げられます。

子が二人以上いる場合は全員で遺産分割協議を行います。全員の共同名義にする場合もありますが、母が存命の場合は母の名義にするケースが多くみられます。(母と子の共同名義にすることも可能)

名義変更に際して、相続登記を行うためには以下の書類が必要となります。

親名義の土地や建物の名義変更には、生前贈与か否かによって用意する書類が異なりますので、事前に必要な手続きを行ったうえで書類を揃え、提出するようにしましょう。